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ゆめを見るユメを視る

某掲示板サイトでの我が家の阿呆共のどーでもいいお話。

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ワンダーランドから飛び降り自殺

  「綺麗なままではいられないって、きっと心の奥底で分かっていたんだと思う」


           


(イベントに向けて、クリスタルとエメラルド。エメラルド視点です。 クリスをどうしようか悩んでいます。1つは今まで通り護られるだけの存在でいさせるか。もう1つは目を瞑ってきた事に対して覚悟を決めること。
でも折角夢落ちなのだから、覚悟を決めさせてみても良いんじゃないかって思っていたり。
というか多分、このイベントがなかったとしても、今のままだと何時かはこうなる日が来るんじゃないか、と思っている僕がいたり)
  


「エメラルド。…私、一緒に仕事をする。一緒に、命を懸ける」

まさか、と思った。
次に、どうして、と思った。

返事も出来ず、ただ呆然と立ち尽くす目の前には、はっきりとした意志を宿す瞳があった。

その瞳を持つこの子は、甘ったるいキャラメル色の長い髪に水色のリボン、そしてエプロンドレス。どうも瞳とは似合わない、いかにも“少女”と呼べそうな服装。…いや、服装だけなら私も人の事は言えない。でも、この子は私以上に幼い。年齢も雰囲気も、言動も。何よりもこの子は優しすぎるのだ。同僚の死程度ならともかく、テレビで流れる近隣諸国の内乱のニュースを見るだけで泣きそうになったり、車に轢かれて惨く倒れている動物達の死骸にすら大粒の涙を零しては部屋に閉じこもる事すらあるというのに。

“ココ”で一緒に仕事をする、という事は、人を殺める事に手を染めるということで。“ココ”は“chess”じゃない。だから、葬儀屋みたいに殺しとは無縁の仕事なんて、何1つ存在しない。何の仕事をするにも、必ず誰かの命に直結する。だから、だからなるべくこの子には仕事を近付けさせなかった。この子がただ黙って世話になるのを良しとしないのは知っていたけど、出来れば、この子には何も知らないで独り立ちして欲しかったから。

理由はそれだけじゃない。だって、これから、

「chessと……、“葬儀屋さん”と、問答無用の殺し合いをするのでしょう?」
「な、なんでそれを、」
「アメジストが教えてくれたの」
「……ッ、の馬鹿…!」
「…私は教えてくれて、とても感謝してる」

軽薄な笑みを浮かべている様子がありありと想像出来る仕事上だけのパートナーの顔を思い浮かべながら、思わず舌打ちをする。そんな私の様子を見たこの子は、くすりと困ったように笑う。私が見たことのないような、静かな笑み。時折マリンが浮かべているような、虚ろにも似た表情。私が危惧するよりも早く、この子はもう変わってしまったのか。

何がきっかけで、何が原因で、何が悪かったのか、良かったのかは分からない。だけど、ここ最近、それなりに対等で均一な関係を保っていた“chess”との関係が急に乱れ始めた。それも、嫌な方向に。気付いた頃にはもう遅くて、つい最近“chessの人間を見たら即攻撃対象とみなすこと”という令が下った。きっと、向こう側も同じような令が下りているのではないだろうか。

私は一度もこの子に「chess=葬儀屋」だなんて教えた事はない。あくまでそれぞれが独立した組織なのだと、嘘を教えていた。この子にはその事実はきっと重過ぎるだろうと思ったから、アメジストと相談してそう決めた。この子が慕うルビーはchessにいる。この子と仲良しなローズはchessにいる。この子が懐いている人達はchessにいる。この子が恋慕の思いを寄せている人は、chessに、

「アンタ、ショック受けてないの、」
「そりゃもう!とてもショックだったわ。ルビーが、ローズが、…“彼”が、……とても優しい“みんな”が、人殺しだったなんて。ちょっとだけ怒りすら覚えたもの。人の終わりを見送る仕事をしている人達が、人を終わらせているのだもの!…本当にショックで、暫くはベットから出れなかったわ。そんな相手と殺し合うなんて聞いて、尚更、ね。エメラルドが出張中だったから、知らないでしょうけど…皆に迷惑をかけてしまったわ」

「でも。…私ね、とっても感謝してるの。clownのみんなに。アメジストに。…エメラルド、貴女にも」
「何を言って、」

もしchessとの抗争が激化するようだったら、私はこの子をclownから追い出すつもりだった。難なら殺すと脅してでも、強引に、この世界から追い出すつもりだった。元のクリアで煌びやかな、本来この子がいるべきだと思う世界へ引き戻すつもりだった。そして、もう今後一切、clownにもchessにも関わらせないつもりだった。譲歩として、“葬儀屋”を除いては。

「私を綺麗なままで有るようにと扱ってくれたことを。硝子細工のように、宝物のように、優しく対してくれたことを。きっととても面倒臭かっただろうに、私を汚い、怖い、恐ろしいものから遠ざけてくれたことを」

私の思いを知ってか知らずか、静かに目を伏せながらぽつりぽつりと零していく言葉を、拾っていくのに私は精一杯だった。何故か分からない、分からないけど、なぜか視界がくらくら。眩んで仕方ない。だって、本当に知らない。本当に知らないもの、こんな表情をする“クリスタル”なんて、私は、私は知らない。知らないわ。

「きっとね、遅かれ早かれ、こうなってしまったんだと思う。だって最初だって、エメラルドが私を止めてくれなかったら、きっとあの男の人をナイフで刺してしまっていたわ。きっとそれが生きる術だと信じ込んで、人を殺す事に躊躇いなんて無くなってしまっていたと思う。でも、clownのお陰で私は今まで手を染めずに過ごしてこれた。何年なんて長い年月ではないけれど、この世界の基準では、本当に、本当に長い時間、私を綺麗なままにしてくれた。…だからね、もう、いいの。もう、clownが、…エメラルドが私のことで苦しむ必要なんて、ないの」

もう揺るがないと言わんばかりに、まっすぐに向けてくる視線。気付かないうちに私の頬に雫が流れるのも時間の問題だった。ぼろぼろと幼子のように涙を止め処なく流す私に、この子はきゅっと抱きついて来た。私の背中に手を回して、片手で私の頭を優しく撫でてくれる。大きくなった、なんて親のような言葉だけど。この子とであった時はもっと今より小さくて、私の口元辺りまでしか身長がなかったのに。今では私よりも少し小さいくらい。きっとヒールを脱いだら大差なく感じる程に、この子は大きくなったんだ。心身共に。

「辛いのは、私だけじゃないわ。エメラルドだって、向こう側にルビーがいる事をとても悲しんでいる事ぐらい知ってるわ。だから、ね?一緒に抱え込ませて?」
「……ッ、ごめッなさっ…!」
「どうして謝るの?私なら大丈夫。実はねエメラルド、私サードニクスに少し手合わせして貰ったのよ!トランプだって、もっともっと攻撃性や使い易さを向上させた改良版をアメジストがプレゼントしてくれた。トルマリンは人間の急所をこと細かく教えてくれた。私だって強くなった。いつ、“彼”と出遭ってもきっと怖くないわ」
「クリス、」
「覚悟は出来てる。“彼”と正面きって向き合う覚悟も、私を育ててくれた恩が有る“clown”に尽くして死ぬ覚悟も」
「ごめん…っ、な、さい…!ご、めんっな、さいっ…!!」
「…お願い、笑って?私は貴女の笑顔が見たいわ、エメラルド」


(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、本当にごめんなさい)
(最後まで貴女を護り切ることが出来なかった私でごめんなさい)
(意志を貫こうとする貴女の瞳に揺らいで、強引に引き戻すことが出来なくてごめんなさい)
(もう貴女とは対等で、貴女を護る必要がないと少しでもホッとしてしまった私でごめんなさい)



「ごめんなさい、“クリスタル”…ッ!!」


泣き崩れる私を、困ったような笑顔でクリスタルは抱き締めた。





24時告げる鐘が啼く





(こうして少女は恋慕を捨てた)
(数多存在する道の中で、恩を返す道を選ぶために)

(しかし少女は知らなかった)
(募らせ続けていた恋慕が、簡単に断ち切れるものではないと)

(少女は知らなかった)
(自分は自分が思っている以上に歪んだ存在なのだということを)




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