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火野・森山・氷響の卒業式前日の夜。
追記より、暇つぶし程度にどうぞ…!
本編のつもりですが好き勝手勢いのままに書いたので食い違う可能性大です。
寧ろ捏造・IFだと思って下さった方が都合の良いかもしれないです←
この3人は作った時と今とで大分色々と変わったトリオでもあり。
ああちゃんと成長してくれたな、と嬉しく思ってます。
これからは登場頻度が減ってしまうけれど、皆様の頭に少しでも残ってくれれば、なーんて。
3人の思いを代弁して。本当にお世話になりました!
身を置く時間の中では早いなんて思わないのに、
振り返ってみると時間の早さに驚いてしまうのは何故だろう。
―火野の場合
(……明日、かぁ)
ベッドに腰掛けて携帯を眺めていた中、不意に見上げたカレンダーの日付は、卒業式の前日を指していた。そしてそれが当日となってしまうのももう時間の問題、そんな時間。早寝早起きが基本の火野が起きているには珍しい時間だった。
視線を手元に戻すと、携帯画面には一杯に友達から送られてきた写真が映っている。機会音痴ゆえに未だスマートフォンに抵抗がある火野は、ほぼスマホが一般化した中で数少ないガラパゴス式携帯だった。故に友人達のスマートフォン上のコミュニティに参加することは出来ずにいる。それを少し寂しいと思わないことなかったが、元々口上手でもない自分が携帯上で上手くコミュニケーションを取る自信が無かったのも事実で、少しばかり安心している所もある。それに何より、
(何だかんだこうやって写真も送ってくれるんだよね…嬉しい)
早くスマホにしてよね!なんて悪態をつきながらも、友人達は長期休暇の際やちょっとした会えない時間にはこまめにメールをくれたし、こうやって添付して写真を送ってくれる。それどころか、きちんとガラパゴス携帯でも難なく写真を見れるようにデータ圧縮などもしてくれるほどだ。本当に友人達には恵まれていると、火野は改めて痛感している。
(色々あった、なぁ…)
友人が送ってくれた写真に映る自分は大体が控えめに隅にいるものが多かったが、それと同じ位に多かったのが親友といえる少女とのツーショット写真だった。中にはいつのまに撮ったのかと心当たりがないものまであって驚愕した。
かけがえのない親友に、愛する恋人に。いつも俯いて人目を避けるようにしていた火野の手を引いてくれる存在に出会ったのは、全てが此処―鴻上だった。
そろり、と動くことのない画面に指先を添える。親友と映る自分は自分でも驚くぐらいに綻んだ笑顔を浮かべていて、少し情けなさすら感じる。横に映っている少女はこんなにも愛くるしく映っているというのに。火野は可笑しく感じて笑みを零す。
(…卒業したら、もう会えなくなっちゃうのかな。…やだ、な)
親友とは色々なことがあった。それでも恋人と同じ位、いや下手したらそれ以上に手放したくない存在が親友である少女なのだ。自分は案外我侭な性分だったことを自覚させられたのはつい最近のことだった。火野は指先で画面の親友に触れた後、その指を自身の口元…口角へと添えた。
(…ううん、そんなことない。これからも会える。それは絶対に変わらない)
(いつも瑠華ちゃんが私の傍に来て手を引いてくれた)
(―これからは、私から会いに行くよ)
明日の卒業式、瑠華ちゃんが好きだと言ってくれた笑顔を浮かべていたい―そう願いながら火野は、静かに携帯の画面を閉じた。
―森山の場合
元々、部屋に友人を招く度に“意外に物がないんだね”といった旨の言葉を受けていた。それを森山は中々上手く自覚出来ずにいたのだが、ここ数日間ですっきりとしていた部屋が更にすっきりとして、森山は自身の部屋は思っていた以上に物が無い部屋だったのだと漸く自覚した。
森山はこの春、進学で上京する運びとなった。といっても元々森山は東京出身の人間なので、感覚としては出戻りに近いのだが。聞かれる度に進学先を答えた後の反応にはもう慣れた。確かに客観的に見て軽そうと思わせる容姿をしている自覚はあったし、まぁそんなキャラじゃねーよな、と自分でも思っていた。元々、森山だって1年前の今頃は―自分が日本で最難関の大学かつ部門に進学するだなんて全く想像もしていなかったのだから。
(にしても、もーちょい違う反応くれても良いと思うんだけど)
出戻りといっても、実家に帰るつもりは毛頭無かった。特待生として学費の免除の資格を手に入れていたので、それに加えて奨学金も視野に入れつつ叔父の力を少々借りつつも1人暮らしをすることが決定している。鴻上に入学してから不定期に麓の雑貨屋でバイトをしていたし、物欲なども実は余り無いのでアクセサリー作りに必要なものを偶に買うだけで順調に貯金の額は増えていた。上京し整理が落ち着いたらすぐにでもバイトを始めるつもりである。その為には少しでも早く身辺整理をしないと―そんな考えの下、森山は卒業式が終われば大した日にちを置かず退寮するつもりであった。しかしまだ、それは自身の中にだけ留めている考えで、まだそれは事実上の保護者ともいえる叔父―古典教師にも言っていなかった。それには大きな、そう、本当に大きな。森山にとっては人生をも揺るがしたと言える理由があったからで。
(…上手く捕まんのかな…、ぼーっとしてたら絶対に近寄れなくなる!)
森山には好きな人がいた。その好きな人が、今の―日本最難関の大学へ進学しようとしている森山を構成したといっても過言ではないほど、森山にとってはとても大きな存在だった。元々はただの友人だった筈なのに、いつの間にか恋心へ育ってことに気付いた時に感じた衝撃は今では少し笑えてしまうぐらい、とても自然に恋心へ変わったのだ。しかし自覚した時、森山は酷く焦った。
ギターを片手に自分の世界を表現し、たくさんの視線や注目を浴びている彼女と、手先こそ器用でも特に何かをするでもなく、自分自身から目を逸らす毎日を過ごしている自分。釣り合う訳がない、そう愕然したのはまだそんなに遠い昔ではない。彼女の傍にいたいから向き合うことにしたのか、向き合う理由に彼女を使ったのか―受験勉強真っ只中の時はそんな陳腐な悩みも持ったものだが、今となってはもうどうでもよかった。
きっと明後日の今頃荷造りをしていたのなら、自身は彼女にふられたのだろうし。逆にいつまでいるんだと叔父に呆れられたなら彼女と上手くいったのだろう。それがどうなるのか、卒業式前日の今、まだ分からない。
(とりあえずヒキョウに砕けたら慰めて貰えるよう言質取っといて、)
(明日ミヤコを見つけたらもうずっと見張っておかねーとな。何時ファンに取られるか分かったもんじゃねー!)
(いや、最悪ファンに捕まってても引っ張り出す。んで、…)
笑顔で、好きだって。伝えたらお前はどんな顔すんだろーな。―緊張しているのに、どこかにやけてしまうのは何故だろう。それでも、焦がれに焦がれたこの気持ちが伝われば良いと、…そう願いながら、森山は隣室の男からの言質を得るべく部屋を出た。
―氷響の場合
“ヒキョウ!明日砕けたら俺のヤケ食いに付き合えよ!”
そんな言葉と共に盛大に扉を開けたかと思えば、明日の決意だか何だかを好き勝手吐き散らす隣室の男を追い出したのが数分前のこと。
(…何が言質取ったですか。俺は惚気に付き合う義務なんてありませんよ)
男のいうヤケ食いが実現することはないだろう。これは予感ではなく、ずっと男の恋路とーそしてその相手の恋路を見守ってきた氷響だからこそ言える明確な確信だった。片や思春期全開の初心男、方や純粋故の生粋の鈍感さを持つ少女。お互い想っているのは傍から見て丸分かりなのに当人達は気付く気配もない様子に、心配を感じることは多々あったが、卒業日という最後の最後にして漸く収まる所に収まってくれるようで氷響はほっと安堵する。
(それにしても、…驚くほど実感が湧かないものですね)
兄と比べてしまう自分が嫌で、逃げるように全寮制の鴻上へ入学した氷響は元々の気質もあったがそれらの柵を忘れるようにダンスや勉強に没頭した。友人はいれどそれはあくまで友人で、それとはまた違うカテゴリーを作るでもなく。一線を引いているつもりはなかったが、それでもどこか無機質な日々を送っていた。しかし、鴻上高校という環境はそんな氷響を許さなかった。
(祈織はもう大丈夫。…手鞠も、心配には至らないでしょう。元々何でも出来る子ですし)
親身に相談に乗ってしまうような友人が沢山出来た。更にこれは今でも信じられないが、娘のような情を抱いてしまった後輩も出来た。“かぁさん”という呼び方に違わず甘えてくるその姿に、ある筈のない母性が湧いたような感覚に陥る。そういう意味で心配という感情は少なからずある。しかし氷響は、娘が自分が知っている以上に器用で一通りのことをこなせてしまうことを知っていた。下手すれば自分の方が心配で会いたがってしまうかも、と…“もしも話”で想像したことがもしもでは済まないような気がして強引にその想像を振り払う。
(……いつ、寮を出ましょうか。なるべく早い方が良い)
氷響は卒業後、麓の中堅大学に進学する。中堅という言い方をしているが、レベルでいえば上の下といった所だ。天才と言われた兄が通う大学と扱う部門は違えど大した差はない。最初は1人暮らしも考えたが、実家からさほど遠くない距離にある大学なので無理にする必要は無いだろうと今の所は実家暮らしを検討しているが、ちらほらと友人達からルームシェアの話なんかを投げかけられているので、とりあえずは大学の生活に馴染むのが先だろうと考えている。そう、麓の大学だ。更に実家も麓。上京する森山とは違い、特に急いで寮を出る理由はないのだ。しかしこうも氷響が退寮を急ぐ理由が1つ。
(あんまり長くいると……変な気が起きてしまいそうです)
不意に脳裏を金が掠める。それに気付いた氷響は慌てて自身を叱責した。その金は、自身が封じ込めようと誓ったのに反してきらきらと輝いて脳裏から離れない。
金の持ち主への気持ちに気付いたのは、本当につい最近だった。だがきっと、その気持ちはもう少し前から抱いていたのだろうと、今なら分かる。何が理由なのか―思い当たる節は割とあるのだが、氷響はその事実から目を逸らす。只でさえこの気持ちを自認するのも苦労したのだからこれぐらい許して欲しい、と氷響は自分に言い訳した。
本当は抱くべきではないのだ、こんな好意―相手は男、しかも年上、加えて教職だし性格が似ているなんてお世辞にも言えない。そんな相手に思いを伝えた所で何になるだろう。きっと困らせるだけ困らせて、それこそ砕けておしまいだろうと、氷響は気持ちを自認した瞬間にその気持ちを封じ込めることを誓った。その為にも、嫌でも金の気配を感じてしまう鴻上敷地内を早く離れる。それが氷響が選択した“最善”だった。
(…見かけたら挨拶だけ、して。見かけなかったら別に無理して会う必要もない)
後に引き返せなくなる前に、離れてしまおう。―そう頭では思っているのに、その度にちくりと刺す胸の痛みを無視をして。氷響は眠りにつくため、部屋の電気を静かに消した。
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