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久しぶりに戻ってきた基地は、時間帯も相俟ってか記憶していたよりずっと静かで。 窓から薄らと差し込む太陽光で拓ける薄暗い廊下はどこかひやりと冷えていて、手中のものがひどく不釣り合いだと思った。
いや、この景色なんて関係ないか。そもそも“俺”が持つこと自体が似合わないね。
“仕事中”に貰ったものは、基本的に仕事用として転用させて貰っている。アクセサリーとか毎回買ってるといくら組織からお金がおりてもキリがないからね。 でも流石に“これ”は人を選ぶ。そもそも貰ったのが初めてで、ちょっと吃驚している俺がいて。“彼”の可能性って凄いな、なんてね。とりあえず自室に戻ろうと歩いていると、前方の部屋から見覚えの少女が出て来て小さく笑う。ああ、あっさり見つかったじゃない、似合う子。
気配を殺しながら少しだけ歩調を速める。手中のものをしっかり持ち直して、そして腕を伸ばせば届く距離まで詰めて、
ぽすっ
「……っ!?」
「やぁメアリー」
「アメジスト! 戻ってたんですね。 で、あの。これは…?」
「ぅん? 見た通りだよ、麦わら帽子」
「はぁ…、」
何がどうしてこうなったのか、理解が追いついていない様子の少女―メアリーを見て、予想通りの反応に笑いが毀れてしまう。
「俺からのプレゼントだよ、大事にしてね」
「えっ!?」
ここが薄暗い室内であるとか、メアリーが夏らしさとは程遠い長袖であるとかはどうでもいい。 光の当て方次第では白銀に近いそれになるブロンドの髪に、被せた麦わら帽子は我ながらよく似合うと思った。
「ぷ、プレゼントって、」
「ああそうだ、それを被って例のボーイフレンドとデートでも行っておいでよ」
「ぼっ…!?」
そしてこういった反応を示す所を見ると、ははっ。メアリーもまだまだ初心で幼気な女の子なんだねぇ。普段しっかりしている分、どこか面白くて仕方がないな。
「もう…一体なんなんですか、アメジスト」
麦わら帽子のつばをぎゅっと両手で掴んで小さく俯くメアリーは、やっぱり女の子で。でも俺は心の奥底でひっそりと思った。 きっとメアリーは、太陽の下じゃなくてこの薄暗い廊下だからこそ麦わら帽子が似合うんだろうね、
…なーんて、ね。
( アメジストとメアリーちゃん / Dear のうた姉さん)
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