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ゆめを見るユメを視る

某掲示板サイトでの我が家の阿呆共のどーでもいいお話。

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残留希望の傷痕


「偶には喧嘩も悪くないよね」
「悪いに決まってるじゃんユイちゃんのおばかちん!」


(某高校より。
 喧嘩でぼろぼろになった地結を悠紗ちゃんが手当てしてくれました。その日の夜の兄妹話。
 
 地結は喧嘩が強い、というよりは体力と武力が並外れてあるって感じ。で、口がよく回る。
 喧嘩ってよりはそれこそ愉快犯って感じで“楽しく暴力ふるってまーす!”みたいな感じ。
 だから自分に返ってくる反動とか気にしない。喧嘩でボロボロの時は大抵傷は反動。

 曲線くんは僕にもよく分からない。地結は恋心を自覚してるのかすら僕には分からない←
 あと話の中で“草谷(そうや)”という名前が出てきますが地結の友達です。一応モブ代わり。

 この文章を書こう!と思ったらテスト期間に入ったので遅れてしまった^q^
 ええと地味に長いかつかなりどうでも良いような補足なので暇潰し程度に追記よりどうぞ><)





俺の妹はいつも突然だ。



―――


私立鴻上高等学校の生徒寮、3年生が住まう2階のとある部屋にて。

「ちょっとユイちゃん!聞いたよ、また喧嘩したんだって!?」

部屋の主である砂原地結の現在の状況。寮の自室。ヤクルトを飲み干した後、寝巻きに着替え途中。上半身裸。腕には中途半端に通しただぼっとしたTシャツ。ついでに言うと現在午後11時を過ぎたところに、やかましい足音を立てながら彼の妹である呼雪が勢い良く怒鳴り込んできた。

突然開かれた扉と、少女特有のきんっとした高い耳に響く怒声に地結はぱちぱちと目を瞬かせるも、相手を認めると呆れたように目を細めながら短く息を吐く。これから妹が重ねて言う言葉を想像するだけで、地結はその億劫さにため息が溢れる。

「しょーがないだろ、向こうから来たんだから。というかノックをしなさい」
「しょーがなくない!全然しょーがなくない!もうっ最近は大人しいと思ってたのに!」
「聞け」
「あーもうっ、また包帯ぐるぐる!ユイちゃんは無駄に美人さんなんだから気を遣わないと!」
「何だかさっきからお前には言われたくない事ばかり言われてる気がするんだけど」

ぷりぷり、なんて可愛らしい擬音よりは明らかにぎゃんぎゃん!と騒ぎ立てる呼雪は勝手にどかどかと入ってきては、兄自慢のふかふかベットに勝手に勢い良く腰掛ける。弾力有るスプリングの感覚を楽しむようにびょんびょんと器用に座りながら跳ねて、そしてそのまま勢いでゴロン。からの足バタバタ。―――我が妹ながら本当に勝手。いや、多分俺相手だからこんなんなんだろうけど、とまるで小学生のように見える呼雪を横目に、中途半端に腕に引っ掛かっていたTシャツを着ようとすると、また呼雪の声が上がる。

「……ん?ユイちゃん、今回なんだか包帯の巻き方が違くない?」
「は?」
「だって凄いキレイで丁寧だよ?僕、そーやんに聞いたから、てっきりそーやんがやってくれたんだと思ってた!」
「……あのおしゃべり草、」

実の兄が野生児と称する呼雪は観察眼まで鋭かった。まじまじと食い入るように見てくる視線が何だか気色悪く、地結は待って待って!と制止の声をかける呼雪を無視してシャツを被った。しまった。包帯している身体なら普段通りの緩いシャツじゃなくて少しはぴちっとした物の方が良かったか、と思ったものの、まぁ、着てしまった以上もう面倒だとすぐに割り切った。無視された呼雪は不満そうにぷくーっと頬を膨らましていた。

呼雪の言う通り、地結は普段から保健室には行かないでいつもつるんでる草谷にこの手の処置を任せる事が多い。この手の怪我は地結にとっても、地結と仲が良い友人達にとっても然程珍しい物ではなかった上、草谷は地結の友人の中では五月蝿いくらいに面倒見の良い男だったからである。実際、今回のこれも地結は最初は草谷に任せるつもりだった。だから怪我に気付いてすぐに電話だけは入れた。のだが。とある女子生徒に出くわした事が切欠で、ものの見事にその予定が狂った。

「ユイちゃんのお友達でここまで綺麗に出来る子っていないよね?そーやんは何だかんだで手先ぶきっちょさんだしぃ……、」

ぶつぶつと呟きながら兄の手当てをしてくれた人物を探ろうとする呼雪を視界の隅に入れながら、適当にお菓子を突っ込んであるラックからチョコレートを取り出して頬張る。流石に寝る前は食欲も薄いのか、一口で十分だった地結は残りは目の前で目を輝かせている呼雪に差し出すと、即座にそれを奪い取られては途端に静かになった。

(―――なんて扱いやすい妹なんだろ、)


―――


一悶着終わった後の、普段温厚で事なかれ主義である地結が柄にもなくボロボロになった姿を見た事がある人は、実際そこまで少なくない。寧ろ、恐らく同学年の女子なら地結がよくその手の傷をこさえる事は本人から直接聞く事は無くても、他に地結と同じくらい、もしくはそれ以上の傷を負っている人物がいる事で間接的に知る。同じクラスの女子に至っては雑に巻かれた包帯姿の地結を見て“ユイってばまたやらかしたのー?もう、無駄におキレイな顔してるんだからさー”とケタケタ笑いながら声をかけてくる程にタフだった。“さ、砂原くんっ、その怪我どうしたのっ!?”なんて可愛らしい事を言う女子はほとんどいない。だからこそ、地結から見た彼女のその反応はとても新鮮で。

彼女が自分の悪癖を知らないのは分かっていた。だけど普段の竹を割ったような気の強い発言をする印象があまりに強くて、どちらかといえばクラスの女子に近い、後者のようなタイプだと思っていた。きっとこんな姿見られたら"先輩ってばなんつう身体になってんですか"とか軽く笑って言うものかと予想していたから、まるで真逆な反応が返って来た事、そして泣きそうな顔で精一杯強がっている素振りを見せるのが、

(…可愛かった、とか)

毒されたと思う。それ程、自分と恋愛とは縁遠いものと思い込んでいた。告白されて付き合った事がある女性は何人かいる。でも誰も音楽には敵わなくて、結局は自然消滅か、自分から別れを告げてしまうのがもっぱらだったから。だから第三者に対して"可愛い"なんて、それこそ口ではよく言うけれど無意識に思うのは初めてで、思わずこの時、ぐらりと何かが揺らいだのを確かに感じた。それもちょっとした揺れじゃなくて、ぐらぐらと勢い良く揺すぶられたような感覚。あの感覚は何なんだろう。いや、でも実はもう知っていたりして。自分で自分の事が分からないなんて初めてだった。


―――


「――ちゃん、―――イちゃん!……ユイちゃん!!」
「…え、あ、何」
「もお、何ぼーっとしてんのさ!チョコレートご馳走様って!」
「ああ、うん。食べるの早いね」

はたり、とぼんやりした頭を現実に切り替えれば、目の前には妹のドアップだった。思いっきりつま先を立てて背伸びをしているのだろう、ぷるぷると震えるのが何だか面白くて、つんっと肩を軽く突いてやる。すると地結の予想通りにぐらりとバランスを崩して、ばたん。

「う、わわわわ!ひどい!」
「あはは」
「あはは、じゃない!…で、さ!でさでさ!結局その包帯、誰がやってくれたの!」

諦めたと思っていたのに、呼雪はまだ諦めていなかったらしい。何がそれ程呼雪の興味を引いたのか地結には分からなかったが、教えてやるつもりは地結にはさらさらなくて。むくっと起き上がってはキラキラと子供のような視線を向けてくる呼雪に、地結はにっこりと笑んで一言。

「秘密」
「なんで!」
「なんでも」

当たり前かもしれないが、呼雪はシャツを勝手に着た時と同じように不満を露にした膨れ面。しかし更に不満だったのだろうか、先程よりも頬が大きく膨れていた。そのぷくっとした頬の膨らみを潰すように指で突くと、ぷはっと息を吐いては今度は睨みつけてきた。最も、地結には何の効果もない睨みではあったのだが。

「んじゃ触る!」
「なんでそうなる」
「分かるかもしんないじゃん!」
「お前は本当におばかだね」

というかお前、喧嘩は駄目って事を言いに来たんじゃないのかと、部屋に来て呼雪が開口一番に発した言葉を思い出すものの、今の呼雪にはそんな事考えていないのは目に見えて、ダンス以外に関しては目の前の物にしか強く興味を惹かれない妹に兄として溜息を吐くいてから、触れるといって何故か頭から腹目掛けて突っ込んでこようとするよ呼雪の頭を、先手必勝と言わんばかりにがしりと掴んで固定する。呼雪も確かにパワフルだけど、背丈の差と男女の力の差には敵わないようで、うがー!と叫びながらどうにか地結の手を振り払おうとするのを見て犬のようだと思った。

たとえそんな犬のような妹でも、親しい友人でも、この場にいない親でさえも。不思議と誰一人として、この包帯に触れさせたくはなかった。きっと、これは紛れもない執着心ということは気付かないフリ。未だ少し熱を持つ、じんじんと疼くような痛みが響くものの、何故か今ばかりはそれすらも愛しいと思う。あわよくば、彼女の触れた傷が少しでも痕になってずっと残れば良い、なんて。

柄にも無い、と気付く。それと同時にきっとこのまま考えていたら、どんどん柄に無い妄想が膨れてしまうと自覚する。地結は、かるく頭を振ってその思考を頭から放り出す。そして未だに抵抗を続けてぎゃんぎゃんと喚く妹を、どうやって追い出そうか考える事だけに集中することにした。




残留希望の傷痕


(俺ってばいつからこんな乙女思考になったんだろうね)
(でもそんな自分も悪くないかも、なんて)


(俺は本当に毒されてるのかもしれない)







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