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出会った頃の蒼と紅の義兄妹。
紅の一人称で割と雰囲気モノに近い。だから心境描写多めで環境描写は少なめです。
(BGM:深海少女/ゆうゆP氏)
記憶の最初に有る瞳は、蔑みを込めた漆黒の色。
記憶の2つ目にある瞳は、“自分”をしっかり握った翡翠色。
記憶の3つ目にある瞳は、優しさと慈愛と強さを秘めた琥珀色。
そして4つ目にある瞳は、一筋の光が有る、眩しい眩しい海色の瞳だった。
カウンターイルミネーション
「ルビー、ルビー、」
彼が私を呼ぶ度に、どこか沈んで行くような錯覚に陥る。
もがいてももがいても、浮かび上がるどころか寧ろ絡まって、沈んでいってしまうような。
息苦しくて、窒息してしまうんじゃないかって。このまま浮かび上がれないんじゃないかって。
「ルビー、なぁルビー、」
彼は何度も私の名前を呼ぶ。
にこにこと、穏やかな笑みを浮かべながら、しゃがみ込んでいる私に手を差し伸べる。
嗚呼私の名前をそれ以上呼ばないで。貴方が付けた、その名前を。
彼が私を呼ぶ声は暖かかった。
知らない、そんなの、知らない。
私はそれを大きく打ち払った。
***
私が彼の手を払ってから三日が経った。
あれ以来彼は来ない。御飯を持って来てくれるのは別の、日本人っぽいの男の人。
何となく、そう、毎日来ていた人がいきなり来なくなったから。私はその人に尋ねた。
「……彼は、何をしているんですか?」
「彼?……あぁ、サファか。アイツはな、自分と戦ってるんよ」
「……?」
「せやね、君、アイツに拾われた所に行ってみぃ。きっと何か分かるで」
そう言って背中を押して来る彼は、穏やかな笑みで私を見送った。
***
彼は、泣いていた。
音も無く静かに、ただ静かに涙を流していた。
理由は知らない。でも泣いていた。
普段、自由に世間を闊歩しながら楽しそうに笑う彼が、泣いていた。
その時私に湧いたのかは分からない。でも限界だった。
「———っ!?」
「………、」
「る、び…?」
彼は吃驚とした様子で目を大きく見開く。あ、また雫が。
私は彼の背中に抱きつく力を強めた。嗚呼、なんでこんな事を。
「わ、り…っ、」
彼はそう言って一言、ぼろぼろとさっきとはまるで違う勢いで涙を零し始めた。
私は思わず吃驚して背中から離れようとしたら、逆にぎゅぅと抱き締められた。
あったかい。
人って、こんなに暖かいものだったのか。
目尻の奥がつんと熱くなったけど、途端に彼は離れて目をごしごしと擦って立ち上がる。
3日前と同じように、しゃがみ込む私の手に手を差し出して来た。
「かえろ、ルビー。にーちゃんと一緒にさ」
「……はい、義兄さん」
その手を取りながら一言ぽつり。
漏らした“兄”の文字に、彼は目を見開いてから、心底嬉しそうに笑った。
それにつられるように思わず私も、小さく笑った。
(初めて会った時に、彼と刃の何かに惹かれた)
(屋敷に行かれた時に見た彼の顔に、思わず見とれた)
(彼に手を引かれて帰った時には、息苦しさはすっかり消えていた)
(あの涙を見た時に)
もっと知りたいと思った
(なぜか、祝福の歌声が聞こえた気がした)
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