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藍が藍になる前のお話。
依存する事に依存するのは罪だろうか?
(BGM:ピアノ×フォルテ×スキャンダル/OSTERproject氏)
こんな感情知らなければ良かった。
愛されたい、だなんて。愛したい、だなんて。
裏切られる事を、忘れてしまう程の愛なんて。
瑠璃色ホリック
「瑠璃のピアノは綺麗な音だね」
そう言って男は、座っている為に幾分低い所にある女の頭を撫でる。
女は少しくすぐったそうに頭を振るが、その表情はとても赤らみを持ちながら笑んでいた。
それに気を良くしたのか男は、そのまま下ろした髪をなぞるように撫でて行く。
「それに髪も綺麗だ。凝った手入れでもしているのかい?」
「してないわよ、そんな事」
(なんてね、嘘)
女———もとい瑠璃は内心薄らと舌を出す。
瑠璃は男、もといフローライトに喜んでもらうただそれだけの為に、毎日欠かさず髪の手入れを行っていた。
勿論瑠璃の性質上それを表に出す事はしないが…、それでも、気付いて貰えると思わず表情が綻んでしまう。
「それに指先も綺麗。このネイルも可愛いね」
そう言って、鍵盤に静かに置かれていた右手にフローライトは優しく口づけを落とす。
どこかうっとりとした様子でそれを眺めていた瑠璃は、ハッと我に返って小さく首を横に振る。
それを見てフローライトも楽しそうに笑う。それが延々と続く循環を、2人は密かに楽しむ。
(嬉しい、)
彼に気に入って貰う、ただそれだけの為に。
瑠璃はわざわざ高い金を出してネイルサロンへ行き、それを保つ為にトップコートを塗り重ねる日々を送った。
正直に言って、瑠璃はそんな女臭い行動は苦手だった。寧ろ嫌いと言っても良い域だと言っても可笑しくはない。
それでも、全ては彼に褒めてもらう為に。
綺麗だね、と。可愛いね、と。その一言二言を貰う為だけにこうして、女を磨く毎日を送る。
「ねぇ瑠璃、また弾いてくれよ。君の弾くセレナーデが大好きなんだ」
「…うん、勿論。フローライトが喜んでくれるなら」
そして瑠璃はまた、鍵盤の上を滑らかに指を走らせる。
瑠璃は根が真面目だ。適当な演奏など、自分自身が絶対に許さない。
しかし、つい気になってしまう。
フローライトの表情、様子、仕草、その全てが。
(こういうのを、依存って言うのかな)
全てが彼に奪われてしまう感覚。否、奪っていってほしいと思う欲望。
今の瑠璃の活動源はそれだと言っても過言ではない。それほど、フローライトに依存している自分に気付いた。
自由を愛する自分がこんなに他人に依存するなんて、と。瑠璃は少しばかり自嘲の笑みを内心で浮かべる。
でもそれと同時に、それでも構わないと思った。
彼になら、束縛されたって。自由を消されたって。身動きがとれなくなったって。
それがフローライト相手なら、寧ろそれを望みたいとすら思った。
音が止んだ。
ほんの一瞬の静寂の後、パチパチと両手を叩く大きく音が響く。
顔を上げれば、ふわり。
額に柔らかい感触が触れてすぐ離れた。
瑠璃は何事かと目を瞬かせた後、フローライトはゆっくりと薄らと笑んで口を開く。
「愛してるよ、“瑠璃”」
嗚呼、また堕ちる。
そう思ったが最後、瑠璃はフローライトの首に腕を寄せた。
(ああ愛してる愛してる、愛してるわダーリン!)
(貴方がいるから、私は女でいられるの!)
脳を侵すメロディライン
(女は知らない)
(男が薄らと笑った意味を)
(女は、未だ知らない)
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